DTM Class 1マシンの解剖学

このページを共有する
2019年から2020年にかけてDTMで戦ったClass 1マシンは、選手権史上最も強力なマシンでした: 2.0リッター直列4気筒ターボエンジンは600馬力を超え、これにより史上最速のDTMマシンとなっていました. このページでは、自然吸気V8からターボ時代に至る技術的進化、エアロとシャシーの詳細、そしてこの狂気じみたクラスがなぜわずか2シーズンしか生きられなかったのかを解説します.
ハイライト
- 2019年は610 + 30 hp (プッシュ・トゥ・パス含む)、2020年は580 + 60 hpのパワー
- 2.0リッター直列4気筒ターボ、最大9,500 rpm、直接噴射
- ホイールベース2,750 mm、最低重量1,070 kg - パワー/重量比は1.6 kg/hp
- ホッケンハイムでのDRSだけで最高速は約9 km/h向上していました
- Class 1のレギュレーションは2020年末に放棄され、 DTMは2021年にGT3ベースへ移行しました
V8からターボへ: DTMマシンのテクノロジーはどのように進化したのか?
DTMの歴史において、エンジンは常に主役でした. 2000年代初頭から2018年まで、すべてのDTMマシンはリア駆動で4.0リッター自然吸気V8エンジンを搭載していました - ターボなし、ハイブリッドなし、ただ排気量とサウンドだけ. しかし実はターボというアイデアがシリーズに初めて導入されたのは2019年です. 実際には、シリーズがターボと初めて出会ったのははるかに昔のことでした. 1993年に導入されたClass 1規定はメーカーに絶大な技術的自由を与え、2.5リッターエンジン、高度なエレクトロニクス、先進的なエアロダイナミクスへの扉を開いていました. 当時のマシンは今日でも「ツーリングカー姿のプロトタイプ」と呼ばれています - なぜなら、まさにそうだったからです!
オープンなレギュレーションには二つの側面がありました. 一方には素晴らしいマシン、他方には制御不能になったコスト. その結果は? 1996年、選手権は完全に崩壊しました. この教訓こそが、2019年のターボ移行がなぜ急ぐのではなく、先送りされたのかを説明しています. ルールは実は2015年の時点で既に決定されており、最初のエアロダイナミクス変更はその年に計画され、ターボエンジンの導入は2019年に先送りされていました - メーカーたちが新しくより高価な開発競争にすぐには入りたくなかったからです. 予想してみてください. 先送りはうまくいったのでしょうか? 続きを読む.
旧世代からの短いテクニカル休憩
80年代と90年代のDTMでは自然吸気エンジンが支配していました. 伝説的なBMW S14は、DTM仕様で当初2.3リッター、8,200 rpmで300馬力を発揮し、1990年までに2.5リッター、340馬力に到達していました. 90年代のClass 1マシンは約500馬力のV6や、約350馬力の2.5リッター自然吸気ユニットを擁していました. つまり、「自然吸気=遅い」という方程式は決して成り立ちませんでした. ターボは単に、より少ない排気量からより多くのパワーを引き出す手段として、常に議題の片隅に待機していたのです.
Class 1時代のマシンは何馬力を発揮したのか? エンジンとドライブトレインの解剖
2019年、DTMは4.0リッターV8に別れを告げ、2.0リッター直列4気筒ターボユニットへ移行しました. 文章はシンプルですが、数字はクレイジーです. アウディのRS 5 DTMエンジンは610馬力を超えるパワーを発生していました. BMWでは、P66 V8の代わりに新開発のP48ターボエンジンが搭載されました. 結果、時速約300 kmに達し、出力/重量比が1.6 kg/hpのM4 DTM.
エンジンのルールはかなり具体的でした: 2.0リッター直列4気筒、最大9,500 rpm、直噴、かつ燃料流量は最大毎時90キログラム. この最後の項目が非常に重要です.燃料流量が出力の土台を決めるからです - ガソリンが流れるほど、爆発も大きくなる. では、余剰出力はどこから来ていたのか? プッシュ・トゥ・パスからです! 一定時間の燃料流量上限を増やすことで、短時間だけ余分な出力を得られたのです. 2019年の式は610 + 30 hpという形でした; 2020年にはバランスが見直され、580 + 60 hpへと変更されました. 全体的な出力レンジは550-650 PSの間でした. つまり、同じクラスでも年によって「出力をどこから得るか」という哲学が変わり得たのです - いいディテールですね?
トランスミッションについては逆の哲学がありました: ギアボックスとギア比は固定で、11種類の異なるドロップギアの選択だけが許されていました. エンジニアたちに「エンジンは自由に、トランスミッションは固定せよ」と言ったわけです. コストを管理下に置こうとする努力はあらゆるところで感じられました.
ルール一覧: Class 1の固定寸法
| 項目 | 値 |
|---|---|
| エンジン | 2.0Lターボ直列4気筒、直噴 |
| 最大回転数 | 9,500 rpm |
| 燃料流量 | ≤ 90 kg/時 |
| ホイールベース | 2,750 mm |
| 最大幅 | 1,950 mm |
| 最低重量(ドライバー込み、燃料なし) | 1,070 kg |
| 2019年の出力 | 610 hp(+30 hp プッシュ・トゥ・パス) |
| 2020年の出力 | 580 hp(+60 hp プッシュ・トゥ・パス) |
市販車に似たシルエットも偶然ではありませんでした: フロントエンジン・リアドライブのレイアウトが、メーカーが示したかったつながりを提供していたのです. しかし外見の下には共用(spec)のカーボンモノコックと共通サスペンションコンポーネントが隠されていました; サスペンションの取り付けポイントさえ定められた「ボックス」内に制限されていました. DTM-GT500比較で知られる詳細もあります: モノコックは約126 kg、ロールケージは約32.5 kgでした. つまり「共用カーボン浴槽 + 独自のエンジニアリング」という公式です.
空力: ウイングは減らし、バトルは増やす
2019年の最大の空力変更は、レギュレーション作成者の哲学を要約していました: より多くの出力、より少ないダウンフォース - より難しいドライブ、より良いレース. フロントスプリッターは小型化され、リアウイングはより幅広で単一プロファイルになりました. 結果は? ダウンフォースは減少し、空力バランスを合わせるのが難しくなり、大きな単一要素ウイングがDRS効果を強めました. DRSは1周あたり最大3回作動でき、チームは作動ゾーンを自分たちで選べました - 横方向の加速/ブレーキ圧の閾値があるゾーンを除いて. ホッケンハイムでは、DRSだけで約9 km/hの最高速が得られました. フリーパスの速度、その上さらにおまけ付き.
制限があるにもかかわらず、Class 1マシンはおそらく現行のどのGTレーシングマシンよりも高いダウンフォースを発生していました; 弱点は空力効率でした - つまり、発生させたダウンフォースに対して支払うドラッグの代償です. ここでの技術的バトルも興味深いものでした: Audiはハイレイク(リアが高い)コンセプトを主張し、BMWはローレイクのアプローチを選んでいた; BMWは、Audiのアプローチの方が効果的だと考えながらも、自社の現行デザインではそれを出せなかったと語られていた.
そして誰もが忘れているが、空力チームの最大の懸念だった問題があった: ターボエンジンの冷却需要. 開発予算は性能よりも冷却とバランスに費やされていた. 考えてみてほしい: 600馬力の4気筒エンジンの熱を制御することは、ダウンフォースを追加で見つけることより難しかった.
サスペンションとブレーキ: 第三スプリング禁止は何をもたらしたのか?
2019年のレギュレーションは第三スプリング/ダンパー(third spring/damper)システムを禁止した. これらのコンポーネントは、レースカーがコーナーでの車体の動きを微調整して制御することを可能にする; その禁止はチームを創造的な解決策へと追いやった. エンジニアリング界からの評価は容赦なかった: この禁止はコスト削減につながらず、エンジニアリングの観点からは無意味な制約だと考えられていた. つまり、善意のルールは、実質的に全員をより手間のかかる道へと押しやっただけだった.
禁止の話はさておき、車で目にする光景は印象的だった: アグレッシブなアンチダイブ(フロント)とアンチリフト(リア)のジオメトリは、ブレーキング時に空力プラットフォームを水平に保つために重要だった. そしてパワーの増大はより高い最高速を意味し、それはより強力な制動を必要とした. 2020年BMW F82の技術仕様を目にすれば、そのスペックに驚かされるだろう: 610馬力の2.0リッターターボエンジン、カーボンセラミックブレーキ、プッシュロッドサスペンション、6速シーケンシャル(順次)ギアボックス; 高速コーナーでは3Gに達する横G. これらの数値を2018年の460馬力V8搭載M4 DTMと並べてみれば、ターボ時代がいかに大胆だったかがわかる.
DTMとSuper GTの提携はなぜ失敗したのか?

Class 1の最もエキサイティングな構想のひとつは、2つの大陸を1つのレギュレーションブックで結ぶことだった. 2014年からDTMとSuper GTは共通の基本規則に取り組み始めた; 2018年6月、両シリーズはClass 1技術規則を正式に発表し、2019年向けにドイツと日本で2つの共同展示レースが計画された. タイムラインはこうだった: DTMは2019年に、Super GTのGT500クラスは2020年に共通スペックへ移行した. 最初の共同レースは富士スピードウェイで行われた.
しかし、書類上は同じに見えたルールも、現場では同じではなかった. DTMは单一タイヤサプライヤーで運用されていた一方、GT500ではタイヤ戦争が続いていた; DTMはプッシュ・トゥ・パスを使用していたが、GT500は使用していなかった; GT500のミッドシップエンジンレイアウトはDTMでは禁止されていた. 提携は短命に終わった - その後、両シリーズが新たなレギュレーションに向けて事前協議を行ったと語られていたが、具体的な共通の未来は生まれなかった. 教訓は? 共通のレギュレーションブックを作るのは簡単; 2つの異なるレース文化、2つの異なる産業的現実を1つの屋根の下にまとめることは非常に難しい.
DTMはなぜGT3に移行したのか? 崩壊の解剖学
Class 1の終わりは、ドミノのように崩れ落ちた. 2018年末、Mercedesは選手権から離脱した. 2019年にアストンマーティンが参戦したが、シーズン終了後に撤退した. 2020年末にはアウディも撤退した.その理由として、コロナ禍による経済的困難が挙げられていた. BMWだけがメーカーとして残り、これによりClass 1規則の廃止が余儀なくされた. 2021年からDTMはGT3ベースの規則に移行した. シリーズ名は維持され、その後、運営権はADACに移った.
問題は、選手権があまりにも高価になったこと. ドイツやヨーロッパでシリーズに参戦できる十分なメーカーを見つけられなかった.
この発言は90年代の終わりを映す、どこか寂しい鏡である. かつてのITC時代を終わらせたのも、まさにこれだったのだから. 「マシンは信じられないほど素晴らしかったが、選手権は高価すぎて、メーカーの支援に頼りすぎていた」という評価は、Class 1にもそのまま当てはまる. 歴史は繰り返した.今度はターボ時代に.
「マシンを遅くする」という目標は功を奏したのか?
ここが最も激しい議論の的だった. 規制当局は「より多くのパワー+より少ないダウンフォース=より良いレース」という方程式を掲げたが、結果はまちまちだった. 2018年と2020年の予選ラップを比較すると、2020年のマシンの方が速かった.エンジン出力の増加と、予選でもDRSの使用が許可されたことがその理由として挙げられる. つまり、「マシンを遅くしている」と言いながら、ものさしは別の場所で当てられていたのだ. そして噂の話もある. アウディが、アクセルオフの際に燃料を貯め込み、フルスロットルで使用することで、フローメーターインジェクターの下流で燃料流量規則を回避していたという主張だ. これは情報源に基づくものの、証明されていない憶測である.それでも、アウディのパフォーマンスアドバンテージを説明する理由として頻繁に取り沙汰された. あなたはどちらを信じる?
結びに: 2シーズンの夢、永続する教訓
Class 1の時代は2シーズンしか続かなかったが、その残した足跡は大きい. DTM史上最速のマシン、2.0リッターから600馬力を絞り出すエンジン、DRSとプッシュ・トゥ・パスを併用する戦術的深み、そしてドイツと日本を同じレギュレーションブックで結ぶという挑戦によって、現代のツーリングカーレースにおけるおそらく最後の「本気」だった. コスト、メーカーの撤退、そしてパンデミックがそれを終わらせた. しかし、その2年間でサーキットを走ったマシンは、GT3時代の今でもなお息をのむほど魅力的だ. 再びこのようなクラスを見ることはあるだろうか? 私に言わせれば、希望はいつも扉の前に立っている.ただし、その請求書は少し高めだが.
参考資料
- The real DTM – A look into Class One (Part 1) - DrRacing's Blog
- Stage set for the Class 1 era: BMW M4 DTM press release - BMW Group
- Footage: The new Audi turbo engine for the DTM | Video
- Class 1 Touring Cars
- Deutsche Tourenwagen Masters
- Super GT, DTM Formally Announce Class 1 Technical Regulations
- DTM and Super GT's first joint race to run this weekend at Fuji Speedway
- SUPER GT Funbook 2025
- Audi to pull out of the DTM at the end of 2020
- DTM made the same mistakes as ITC, says Manuel Reuter
- DTM: Series could delay turbo engines
- BMW M Motorsport's 2019 Class 1 DTM challenger
- DTMマシンの驚異のテクノロジー
- DTM / GT500 2014: 最高峰のツーリングカーたち
- BMW F82 DTM Class 1マシンを詳しく見る
- アウディ、新型ターボ4気筒から600馬力以上を絞り出す